10月6日(米国時間)、サンフランシスコで開かれたOpenAIの開発者会議に、同社の最高経営責任者(CEO)サム・アルトマンと元アップルのデザイナー、ジョナサン・アイブが登壇し、現在開発中の「一連のデバイス」についておおまかに語った。
「スマートフォンやコンピューターは素晴らしいものですが、まだ新しく挑戦できることがあると思います」と、アイブとともに登壇したアルトマンは話した。ふたりはOpenAIが複数のハードウェア製品の開発を進めていることを認めたものの、用途や仕様などの詳細は明かしていない。
「ハードウェアの開発は難しいものです。新しいコンピューティングの形態を見いだすのは本当に大変です」と、アルトマンはイベントの前に開催されたメディア向け説明会で語っていた。「素晴らしいものを生み出せるチャンスはあると思いますが、実現には時間がかかるでしょう」
人とデバイスの関係を変える
会社としてどのようなハードウェアの開発に注力すべきかを探るなかで、チームで「本当に魅力的な製品のアイデアを15〜20ほど生み出しました」と、アイブは語る。
「わたしたちはいま、テクノロジーとうまく付き合えていないと思います」とアイブは言う。「人工知能(AI)は、そうした問題の延長線上にあるものとは見ていません。まったく異なるものだと考えています」。アイブがOpenAIとAI搭載デバイスを開発したいと考えた理由のひとつは、人々が日常的に使っているデバイスとの関係を変えたいからだと話す。
アイブは、AIには生産性を高める力があることを認めながらも、効率アップを開発中のデバイスの主な目的には位置付けていないようだ。むしろ、社会によりよい影響をもたらすものにしたいと考えている。こうしたデバイスは「わたしたちを幸せにし、心を満たし、穏やかにし、不安を和らげ、孤立を減らすものであるべきだと考えています」とアイブは語る。
これまでの報道によると、OpenAIはスマートフォンやノートPCとは異なる新しいカテゴリのハードウェアの開発を計画している。『The Wall Street Journal』は、アルトマンが最近OpenAIの社員向けの説明会で、その製品がユーザーの周囲の環境や日常の体験を認識するものになる可能性を示したと報じている。このデバイスには画面がなく、カメラやマイクからの入力に基づいて動作するとみられている。
OpenAIはデバイスの発売時期を公には明らかにしていない。とはいえ、『Financial Times』によると、2026年後半の発売を目指しているという。同紙はまた、開発が技術的な問題によって難航しているとも報じている。
「最高にクールな技術」に取り組む
アイブは、アップルのiPhoneやMacBookに見られる、精緻でミニマル、そしてメタリックなデザインで知られている。アイブがOpenAIと正式に手を組んだのは昨年で、AIスタートアップのOpenAIとアイブのデザイン会社LoveFromが共同プロジェクト「Io(イオ)」を立ち上げたことがきっかけだった。OpenAIは今年5月にIoを完全に買収すると発表したが、アイブは独立した立場を保つという。
「ChatGPTが登場したことで、過去6年間のわたしたちの目的が明確になったと感じました」と、LoveFromについて語ったアイブは語る。「この技術の可能性をもとに、インターフェイスのアイデアを考え始めていたのです」
アルトマンとアイブは、Ioの買収をスタイリッシュな動画で発表した。この動画のなかでふたりは詳しい説明は避けながらも、「わたしたちの想像をかき立てた」新しいデバイスについて話している。
アルトマンはそれを「世界がこれまで見たことのない、最高にクールな技術です」と語った。アイブはさらに、「わたしたちをよりよい自分にしてくれる、新しい世代のテクノロジーがまさに生まれようとしています」と付け加えた。
模索続くAIデバイス分野
AIソフトウェアを搭載した消費者向けデバイスの最適なかたちを模索しているのは、OpenAIだけではない。メタ・プラットフォームズは2023年以来、AIスマートグラスを約200万台販売したと発表し、最近さらに3つの新モデルを投入する計画を明らかにした。また、「Friend」ネックレスや、AIを搭載したもふもふのペット型デバイスなど、より個性的でニッチな製品も次々と登場している。
AIデバイス分野に早期参入した企業の多くは困難に直面するか、あるいは失敗に終わっている。『WIRED』は昨年、音声操作で動作する携帯型AIアシスタント「Rabbit R1」を試したが、その体験は概してもどかしいものだった。また、2023年に登場した「Humane Ai Pin」もユーザーからおおむね否定的な評価を受け、発売から2年足らずで市場から姿を消している。
(Originally published on wired.com, translated by Nozomi Okuma, edited by Mamiko Nakano)
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